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2017.4.27 月島区民館 

テーマ:フレンドシップグリーンで広がるマンションコミュニティ

1.講 師:
 江東区土木部管理課CIG推進係 諏訪正晃氏
 江東区の水辺に親しむ会      飯田とわ氏
2.場 所 月島区民館
3.日 時:平成29年4月27日(木)18:30〜20:40

参考資料
2017.4.27            
月島区民館                  
フレンドシップグリーンでつながるマンションコミュニティ

講 師:NPO法人江東区の水辺に親しむ会、ランドスケープデザイナー
飯田 とわ 氏
    江東区土木部管理課CIG担当       諏訪 正晃 氏

 第51回勉強会は、約30名の参加があり、まず、恒例の参加者全員の自己紹介を行った後、「NPO法人江東区の水辺に親しむ会」の飯田氏による「マンションでできる緑化活動」の事例と、江東区の諏訪氏による、「区の緑化推進にかかる意気込みと取組状況」をお話しいただいた。
 そして出席者は、「手軽にできる『差し芽』」を体験。区による緑化への熱心な取り組みや、その一環として、手軽にできる小さな活動の積み重ねの実践についてよく分かる勉強会でした。

〇飯田氏のお話し
 飯田氏は、植栽のデザインに関わる会社の運営をしており、マンションも含めた様々な植栽のデザインに関わることが多く、マンション管理会社のコミュニティ誌の取材を行うなどしており、自身もマンション居住者です。

 さて、「江東区の水辺に親しむ会」は、江東区には多くの水辺があるので、最初は水辺に親しみながら、地域と一緒に水辺を考えたいと、2000年1月に設立した団体です。
 活動初期と比べると、水辺を取り巻く環境も変わっています。地域の方たちの水辺に対する意識も変わってきました。阪神大震災の経験から、水辺が輸送路として見直されてロックゲートが出来、墨田区にはスカイツリーが出来、2020年にはオリンピックが開催されるなどますます水辺は変わっていきます。今後も変わりゆく水辺を、地域とともに作りたいと考えています。
 そして、従来の活動実績から、区の推薦をいただき、内閣府の「都市再生モデル調査」のひとつ「防災対策を考慮した水と緑のネットワーク再生」調査も行いました。

 また、本日のテーマである「フレンドシップグリーン」とは、マンションのバルコニーは共用部だけれども、管理組合主導ではなく、各居住者が手軽に行う緑化を、区と共同で発展させていきたいと区に提案し快諾いただいたものです。

〇諏訪氏のお話し
 まず、江東区の紹介及び「CIG(City in the Green)ビジョン」について説明。
CIGビジョンとは区長の造語で、「緑の中の都市」という区の目指すべき都市の姿、都市緑化施策の総称です。「平成24年度江東区CIGビジョン」としてスタートしました。
 CIGビジョンによる緑化都市の姿のイメージ図を示します。江東区ではCIGビジョンに基づく10年間の長期計画を立てています。
 区がどうして都市の緑化を行うのかというと、「健康で快適に暮らす」ためには緑化が重要であり、それに税金を投入して実現しようというものです。
 緑化の効果は大きく5つ、「地球温暖化の防止」、「ヒートアイランド現象の緩和」、「生物多様性の選択」、「都市防災機能の向上」、「市民活動や憩いの場を提供」です。 そして緑は豊かな地域づくりに役立つと考えます。「緑が街にあれば、環境が良くて、気持ちよい」。水際都市江東の品格向上に資するものとしたい。

 さて「緑とコミュニティ」の関係についてです。コミュニティという語の意味は「何かを共有していくこと」、「場所」の共有だけではなく、「景観」や「体験」も共有していくことだと考えます。

 緑とコミュニティとは、世代を超えて「緑の価値」を共有していくこと。
 一つのマンションで、年齢や家族構成も異なる住民が、「緑」を通じて、コミュニケーションをとることが可能になると考えます。建物は時間がたてば価値が落ちていくものですが、緑が育つことで、その建物に付加価値が増える。そしてその緑の資源は、時間がたてば、循環して次の緑の資源を生み出していく。この好循環で都市の価値をあげていくことで「都市環境評価」は向上し、生活の質の向上につながっていくと考えます。

 マンション内に緑の小さなコミュニティができると、それがマンション全体のコミュニティの素地となり、地域のマンションに広がって、より広い地域コミュニティになっていく。つまり、コミュニティ発の「City in the Green」の実現を目指すということです。

 江東区では現在「CIGビジョン推進キャンペーン」として、区民の「緑に親しむライフスタイルの研修」により、緑に親しむ機会を増やし、緑化を進め、人材を育てることを目的とした事業を実施しています。
 最初はマンションに限って始めたものではなく、数値でわかるものに取り組みたいということで、「緑被率」(街に緑がどれだけあるか)の向上をさせようとして始めたものです。当初の調査結果の15.4ポイントから、目標の22ポイントまで7ポイント向上させることを目指すためのものでした。

 マンションのベランダでガーデニングを行うことで緑被率が確実に上昇する、緑に親しむライフスタイルまで確立できるのではないかと考えて事業に取り組んでいます。

 具体的には、区内のマンションを対象にモニターを募集し、緑化の講師を派遣しています。花苗などは区で提供し、緑化活動を行って、中間報告会、最終報告会に参加いただくという活動で、3年位をモニターの活動期間として期待しているものです。
 
 企画は江東区の水辺に親しむ会で、資材を提供し、区内の同一マンション内の複数名のグループを対象に、管理規約でベランダ緑化を禁止していない条件で、モニターを選定、費用は無料、講習会の開催からの事業を行っています。

 もう数年事業に取り組んでいるので他のモニターを務めているマンションのメンバーの方の支援も受けて活動を行っています。多くのメンバーのいるマンションではこの活動がコミュニティの活性化につながり、マンションの価値向上にも役立っているとのことで、活動事例の写真も多数紹介いただきました。また、「初めてのマンション緑化」のガイドブックも作成し活用しているとのことです。

 この事業では、年間でだいたい13のマンションにモニターとなっていただき、講座を行っています。回数としては年間25回くらい、マンションだけでなく街中に出ての広報活動も行っています。今年は次のガイドブック第二弾「もっと楽しむマンションベランダ緑化」の冊子を発行する予定です。昨年度の最終報告会では、ワークショップでベランダ緑化に関するレーダーチャートづくりを行いました。活動を、個々のベランダから、コミュニティ全体に広げていくためには、もう一工夫必要と考えています。方法は、フレンドシップグリーン、モニターのマンションで育った苗を、少し切り取って、「差し芽」を行っています。買った苗とは一味違う感覚が味わえるもので、この、フレンドシップグリーンを広めるイベントを実施しています。

〇フレンドシップグリーンの体験
 本日の参加者に実際に「差し芽」の体験を行っていただきました。
 
〇CIGキャンペーンの課題について
 活動は、マンションコミュニティ向けに行っているもので、個人を対象には考えていない。この成果が緑化の指標にどう反映しているのか把握できていないところが課題と感じています。
 また、マンション同士で自主的に広めることができるようになれば、そして地域に広がっていけばいいと考えている。この活動が「ライフスタイル」から「文化」にまで広がって行くには時間がかかると思う。この繋ぎをどうするか、考えています。
 まだ、区内のマンション数に比べれば、モニター数は少なく、参加者数も少ない。モニターの活動で終わらせず、もっと広めていきたい、しかしどこまで広められるかはまだ、未知数。CIGが自主的に広まっていく仕組みのために、CIGサポートマンションの制度も検討しています。

 「主体化」「相互触発」「主体の連携」この3段階がコミュニティ活動のレベルとすると、現在CIGは、「主体化」から「相互触発」のレベルには進んでいると思います。「主体の連携」(マンション同士の自主的な交流による緑化の推進)については模索中であり「CIGサポートマンションから広がる緑の輪」と感じてもらえるよう活動を行いたいと思います。
 
江東区産ベゴニアの株分け体験をしました 缶詰と新聞紙で容器を作り
花の部分を切り、株だけを土に差します
出来上がり