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2016.09.29 月島区民館 | ||||||
テーマ: 「改正標準管理規約との賢いつき合い方」 日 時:平成28年9月29日(水)18:30〜 |
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資料 | ||||||
「改正標準管理規約との賢いつき合い方」 〜自分たちに一番あった規約を持とう〜 講師:マンションコミュニティ研究会 代表:廣田信子 第46回勉強会は、当マンションコミュニティ研究会代表の廣田信子が登壇して、国土交通省が今年発表した改正標準管理規約を、マンションでどのように取り入れたらよいのか、そのつき合い方について自身の思いを講演しました。80名を超える方が来場し聴講してくださいました。 改正標準管理規約に関する国土交通省の説明は一方的で、規約を制定する当事者の管理組合にきちんと伝わらないだろうとの印象を持った廣田代表は、管理組合をフォローする必要性を感じていたそうです。 講演は、標準管理規約は法律ではなく、国土交通省が管理規約のモデルとして公表しているに過ぎないとの確認で始まりました。築年数、規模、形態、価値観等がマンションによって異なり、一つのモデルですべてをカバーすることは困難です。「(男性・女性、子供から高齢者まで)誰が着ても似合う服はない」との例えが印象的でした。 本題の前に、標準管理規約の誕生から最新の改正標準管理規約までを振返りました。 標準管理規約の誕生は、昭和57年で、マンション管理の関連業界団体に対して、指針として活用するよう通達しました。監督官庁からの「通達」であり、業界団体にとっては、管理規約をこれに準じて作らざるを得ない状況でした。この通達以前は、「委託する管理会社を○○に指定する」、「○○○(元地主)は無料で駐車場を使用できる」、「管理人室を○○(管理会社)の所有とする」など、今では信じられない条文もあったそうです。 翌年(昭和58年)には、区分所有法の大幅改正があり、標準管理規約もそれに合わせて改正されました。特別多数決議が登場したのはこのときです。 その後、社会状況の変化に合わせて、平成9年に改正がありました。「団地型」、「複合用途型」が登場したのはこのときで、それまで公団の団地には手本とする規約がなかったわけです。 平成14年の区分所有法改正と前回改正からの社会状況変化を織込み、平成16年に標準管理規約の全面的な見直しがありました。従来、分譲業者が原始規約を作成するときの「指針」だったものが、管理組合が管理規約を制定・変更するときの「参考」に位置づけが変わりました。管理組合の業務にコミュニティ形成が加えられたのもこの時です。 平成23年には、高齢化による役員のなり手不足に対応するための見直しが行われました。役員の資格要件から「現に居住する」を外す資格要件を緩和しました。しかし、「なり手不足」と言うマンションを実際にヒアリングした廣田代表の感覚では、一部の人が役員を長期にわたって継続していて、「世代交代していないだけ」と思われるマンションも多いとのことでした。 そして平成28年の今年、最新の標準管理規約の変更が発表されました。この検討会は平成24年に始まり、当時マンション管理センターに勤務していた廣田代表は最初からオブザーバーとして参加していたそうです。 続いて、平成28年改正での改正点ごとに、個々のマンションの規約改正に取り入れる際の注意点を廣田代表が自身の視点で解説しました。 1.「コミュニティ条項」の整理について 管理組合の業務と管理費の使途から「コミュニティ条項」が削除されましたが、適正化指針では「良好なコミュニティ形成に積極的に取り組むことが望ましい」としている。 また、パブリックコメントに対して国土交通省は、「マンション及び周辺の居住環境の維持及び向上に資する活動には、支出可能であると考えており、その範囲内におけるイベント等への支出の是非については、各管理組合での合意形成によるべきものと考えています。」と回答をしている。これからすると、規約を改正しなくとも問題はなく、むしろそのままの方が良い。 2.外部専門家の活用について 総会での役員・監事選任条項から「区分所有者の中から」を削除して、外部者も選任可能と改正しているが、外部者を理事長とするという重大な事項が総会で選任された理事の互選のままとなっている。外部者をどの役職で起用するかは総会の決定事項としたほうがよいのではないか? マンション管理は専門知識を要するゆえに専門家の活用は必要だが、課題は多岐にわたり(建築・会計・法律等々)、すべての方面に精通する専門家はまずいない。(一人の専門家を理事長に据えず)必要の都度、必要な分野に詳しい専門家を顧問とするのではだめなのだろうか? 3.役員の欠格条項について 役員の欠格条項が新設された。外部者を役員に選任可能としたことで追加された条項だが、組合員から選任する場合も適用される。この改正を取入れると、役員改選の都度、次期理事候補が出所・執行猶予明けから5年以内でないかとか、暴力団員等でないかといったことを確認しなければならない。実際に確認できるか? 4.役員の利益相反取引の防止について 役員が管理組合と利益相反する取引をする場合は、理事会の承認を受けなければならないとの規定が新設された。利益相反取引の実施を決議する方法を決めるより、そもそも利益相反行為は禁止として管理組合と利益相反関係にある者を理事としない規定が必要ではないか? 5.理事の役割、監事の役割の強化 理事長に定期的な職務執行状況報告を義務付ける規定が追記された。これも、外部者を理事長とすることを想定した改正だろうが、このまま規約改正に取入れると組合員から選出した理事長にも定期報告義務が課せられる。管理組合に著しい損害を及ぼす恐れのある事実を発見した理事へ監事に報告する義務を負わせる追記もあり、役員負担は増大する。役員のなり手不足を助長するだけになりかねない。 監事の業務・会計に関する調査権限や理事会での発言権限強化は、真面目な(細かい)監事が些細な事柄も取り上げて理事会の進行を妨げることがないだろうかと心配。 6.総会出席代理人の範囲の規定について 平成23年改正で撤廃された総会への代理出席者制限が、配偶者・一親等の親族、同居する親族・他の組合員に限定された。ファミリータイプの高齢区分所有者の場合、自分は外に出て子や孫を住まわせていることもある。この場合、区分所有者と同居する親族にあたらず、子の配偶者・孫は一親等の親族にもあたらない。専門的な議案があれば専門家を代理出席させたいというニーズもある。 7.専有部分の修繕について 専有部分の修繕等について、「理事会承認が必要な工事」と「理事会に届出が必要な工事」と「届出不要な工事」の3つに細分化された。承認・届出が必要な工事かどうかは申請者側の判断となっていて危険。申請に対する承認スピードを速めることは必要だが、専門家に承認可否を確認させるステップはあった方が良い。 8.開口部の改良について 区分所有者から実施の申請があったときに、許可するかしないか決定するための細則やガイドランをあらかじめ決めておくことが不可欠。 9.暴力団の排除規定について 排除の対象は、暴力団員だけとするか(暴力団関係者や準構成員も対象とするか)。 賃貸借だけ禁止でよいのか(譲渡禁止も全員合意があれば協定可能)。 一番問題となっているのは、組事務所としての使用であり、事務所使用を認めている場合や複合型マンションでは、出入りを規制は検討したほうが良い。 規約違反があった場合、管理組合だけで暴力団相手に契約解除できるのか?・・・もしもの時の対応も想定しておく必要も。 家族と同居する場では暴力団員も周囲に迷惑をかけず平穏に暮らしていることもある。暴力団員かどうかを果たして見分けられるか? 10.災害時の対応について 規約に別段の定めがなければ、共用部分で被災した部分の修繕(保存行為)は、一区分所有者単独でも実施できる。ただし、管理組合のお金で修繕するとなると、修繕費支出の理事会決議や修繕積立金から支出するための総会決議が必要。災害時は多くの理事や組合員が避難しており、理事会や総会を開催できない可能性があるので、災害時の対応は理事会決議或いは総会決議がなくても実施できるような別段の規定が必要。 11.緊急時の理事の立ち入りについて 災害、事故等が発生し共用部分や他の専有部分に一定の重大な影響を与える場合、理事長(又はその委任者)は本人の許可なく立ち入ることができる強い規定になったが、その際のドアや窓を破って入るのか、全戸から鍵を預かっておくのかといった運用方法を決めておかなければいざというときに役に立たない。 一人暮らしの高齢者の安否が確認できないときは、緊急時ではないのか? 標準管理規約に準拠した規約を制定するのは楽だが、自分のマンションの状況に合っているのか吟味することが大切というのが、今回の勉強会のまとめでした。決まりを守れない、決めたことを実行できない・・・とう規約は無意味です。今回の改正標準管理規約も、改正の考え方として参考にするのは良いことですが、文章をそのまま引用するのではなく理事や組合員が理解できる内容にカスタマイズしていくことが重要です。 【Q&A】 (1)Q: 「保存行為」とはどのような行為なのかよくわからない。定義を書いておく必要があるのではないか? A: そのとおりだと思う。わかりやすく書くことが大切。 (2)Q: (コミュニティ条項を削除した)標準管理規約と(コミュニティは大切と言っている)適正化指針のどちらの位置づけが上なのか? A: 法律に基づいて公表されている適正化指針のほうが上。 以上 |
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廣田信子代表 | ||||||
84名の方々が参加 | ||||||