mckhug.com
    
2016.07.21 月島区民館
 
「高経年・小規模マンションの課題対策」
東京都マンション管理士会 都心区支部 幹事 平田英雄

資料1:マンショ再生 化の方向付けイメージ〜 建替えか、修繕+改(耐震含)か〜
資料2:高経年・小規模マンションの課題対策

2016.07.21月島区民館

「高経年・小規模マンションの課題対策」
講師:東京都マンション管理士会 都心区支部 幹事 平田英雄氏

 第45回勉強会は、マンション管理士の平田英雄氏を迎え、高経年の小規模マンションの課題とその対策についてお話していただきました。約50名の方が来場して聴講されました。

 平田氏は、不動産会社からマンション管理会社へ転職して16年の勤務の後、4年前に独立して小規模マンションの自主管理の支援を始めたそうです。主に会計を切口とした顧問業務を行っているとのことでした。
 営利企業である管理会社が利益の薄い小規模マンションを敬遠する現実に直面して、将来小規模マンションの管理が行詰るという危機感を覚え独立したそうです。そんな使命感を持って取組んだ経験や実績を織り込んだお話でした。

1.マンション管理の現状
 国土交通省が実施した平成25年度マンション総合調査によると、管理会社をリプレースしたことがある管理組合は18.3%、自主管理の管理組合は8.5%です。前回平成20年の調査と比較すると、どちらも増加しているとのこと。
 管理組合が問題意識を持って管理会社と折衝すると管理委託費が下がるのが現状。管理委託費が低下したしわ寄せをうけて下請会社が疲弊しています。政府が最低賃金の上昇を目指していますが、それも管理員や清掃作業員などの労働に頼る管理業界には大きく影響します。

2.管理組合を取り巻く環境の変化
 管理会社は利益思考を強め、利益の大きさで管理組合を選別する傾向にあります。小規模マンションは管理会社にとって売上が小さく魅力薄で、解約覚悟の(狙いの場合も)値上げ要求もあります。
 また、30年以上の高経年マンションでは、建替えを視野に入れた再生検討も必要となります。直ぐに建替えるのであれば修繕は必要ありませんが、何十年も先であればそれまでの大規模修繕計画が必要です。建替え時期の合意形成がないと建替えも出来ない大規模修繕も出来ないという状況に陥ります。加えて、組合員の高齢化に伴う空室や滞納の増加、役員の成り手不足。さらには、民泊などの社会環境の変化など、マンション管理は一層難しくなってきます。小規模マンションは、役員人材も不足しがちのため、運営がより困難な状況に陥る危険性が高いと思われます。

3.対策の考え方
 小規模マンションでは案外自分たちで出来ることが多く、比較的、自主管理し易い面があります。しかし、自主管理には次の環境が必要です。
(a)管理の担い手(時間に余裕がある居住組合員)が存在する
(b)管理組合全体の協力体制と参加意識がある
(c)有能・優良な専門家・業者を利用できる資力がある
 「参加意識(b)」は必須として「担い手(a)」と「資力(c)」の状況によって適する自主管理の方式が異なると平田氏は言います。方式は主に3種類あります。
・担い手があり資力もある場合には、積極的に専門家や専門業者を活用する方式
・担い手がない場合には、第三者に役員等を委任する第三者管理方式
・担い手はあるが資力がない場合には、必要に応じて専門家を活用する分離委託方式

4.対策事例
 前項の3つの自主管理方式についてそれぞれの対策事例の紹介がありました(個々の事例は資料を参照してください)。
 ただし、第三者管理方式につては不安の提起がありました。投資型の分譲賃貸マンションでは、既に管理会社が管理者となっている第三者管理方式が定着していますが、区分所有者が管理に目覚めても管理会社に牛耳られ取り戻すことに苦労する事例があります。さらには、管理がうまくいかなくなったときに早々に撤退する危険もあります。
 小規模マンション支援を念頭に独立した平田氏は、主に分離委託方式に注力しているそうです。会計業務支援をコアにして、管理組合運営の日常課題について必要に応じてアドバイスする顧問業務をセットにして安価に提供する方式で資力に乏しい管理組合でも利用可能なサービスを提供しています。

5.まとめ
 高経年マンションは、修繕による延命や建替えといった再生方針の検討なしに長期的な運営はできません。しかし、再生方針検討には建築技術はもとより管理組合の大多数(できれば全員)の納得を得ながら進める専門性も必要で、専門家のアドバイスは欠かせません。
 小規模の自主管理マンションにおいては、部分委託であれば費用アップなしに管理会社を使うことも可能な場合があります。そのようなことも専門家のアドバイスの領域で、自主管理をせざるおえないマンションでもスポットで専門家を活用したほうが結果的に役員の負担が軽減されてなり手不足の対策となるなど持続性に寄与します。

【Q&A】
1Q:平田氏が受けている会計業務には出納も含むのか?
 A:通帳や印鑑を預かると管理業の登録が必要となるので出納まではやっていない。

2Q:問題意識の低い管理組合は外部の専門家を活用できる事すら知らない。そのような管理組合に情報提供するのはどのような方法が効果的か?
 A:活用した管理組合からの口コミは効果的だが広がりは限定的。行政の情報提供も重要と思う。

3Q:マンションは個人資産でありスラム化するのは自己責任と思う。行政が税金を使って支援することをどう思うか?
 A:怠けていた者を税金で救済することは確かに悩ましい問題である。しかし、スラム化したことが地域に及ぼす影響を考えると放置できない面もある。

以上
東京の高齢化問題の一例として、老朽化マンションの課題を取り上げたいと、TV取材が入りました
平田英雄先生↑↓
TV局から出席者への取材もありました