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2016.03.24
 月島区民館 
講師:サンライトパストラル六番街 高齢者支援委員会 委員長
中西 博 氏
住み慣れた地域で暮らし続けられる助け合いのしくみづくり
 
資料
住みなれた地域で暮らし続けられる助け合いの仕組みづくり
<管理組合主体による高齢者支援の仕組みづくり>

講 師:サンライトパストラル六番街管理組合
高齢者支援委員会 委員長 中西 博 氏

 第42回勉強会は、約40名の参加があり、恒例の参加者の自己紹介のあと、「住みなれた地域で暮らし続けられる助け合いの仕組みづくり」として、松戸市のマンション「サンライトパストラル六番街」の管理組合高齢者支援委員会委員長の中西 博氏に、管理組合が主体となって取り組む高齢者支援の仕組みについて語っていただいた。

1.高齢者支援委員会の位置付けと地域とのかかわりとして

 サンライトパストラル六番街は千葉県松戸市新松戸に立地する、築35年296戸のマンションで、平均年齢は昨年のデータで全住民53.3歳、世帯主では65.7歳となっている。

 高齢者支援委員会は管理組合の総務部会に所属する専門委員会。

 新松戸地区の行政地域の関わりの特性としては、自治会のない(加入していない)大型マンションが多く、結果として行政はやむを得ず大型マンション(概ね150戸以上)の管理組合を、町会と同等の位置づけとして町会連合会(12町会と16マンション)を構成している。

 この連合会に、地区の社会福祉協議会、民生委員などの関係機関等で構成している新松戸地区高齢者支援連絡会があり、中西氏もマンションの代表として参加している。

 最近のマンションにおけるコミュニティの取り扱いに関する行政の動向としては、国土交通省は標準管理規約改正案で管理組合の業務から「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ醸成」の条項を削除する一方で、適正化指針改正案では「コミュニティ形成に積極的に取り組むことが望ましい」と曖昧な方向性を示している。一方で総務省は通達で管理組合を自治会・町内会と同様に扱うよう指示している。

 管理組合と自治会について、管理組合は区分所有者の強制加入団体で、建物、敷地、付属施設の管理を目的としているが、自治会は地縁に基づいて形成される任意加入の団体で地域の親睦、福祉、防犯、文化等にかかわる活動を行うものである。両組織の目的や構成員は異なるが、別の組織として強調し過ぎると、防犯や防災、高齢者問題、地域とのつながりなどという課題解決を困難にする。管理組合はどういう活動を行うのが適切かは、行政側の対応もあるが、結局組合が自分で判断することになる。

2.高齢者問題への取り組みとして

 マンション区分所有者の高齢化が管理組合の運営に与える影響と、体力・気力の衰えた高齢者を管理組合としてどう支援するかという二つの視点から検討。結局、齢はいくつになっても、元気な人に役員をやってもらうしかないという結論に至った。(1)介護予防と(2)日常生活支援の二本の柱に支援することを目指し高齢者支援委員会を設置した。

 委員会の位置づけは初年度理事会の諮問機関として業務の企画立案を行い、2年目からは実質運営委員会として活動している。理事委員と居住者から公募した専門委員で構成しており、より短期間で目標を達成できるよう、全体構想を固めてから業務を順次スタートさせた。現在は(1)ふれあいサロン業務、(2)高齢者見守り支援業務、(3)助け合いサービス業務、(4)啓発・相談業務を行っている。

3.具体的な支援活動業務の内容として

 目的は「高齢者が『介護・診療に至る』前の段階をケアすることにより、楽しく安心して暮らせるマンションを目指す」ことで、目標は「利害関係が密接な共同体であるマンションが、率先して地域コミュニティの発展をリードすること」。キャッチフレーズは「困った時はお互いさま!」。

 具体的な業務としては、
(1)ふれあいサロン業務は、週1回お茶サロンを開催。
(2)高齢者見守り支援業務は「見守りサービス利用申込書」により具体的な見守り方法(定期的な訪問あるいは電話)を決め「見守り支援個人カルテ」を作成し、決められた日からカルテに従い見守りを実施するもの。
(3)助け合いサービス業務は、住民からのアンケート結果をもとに21項目のサービス内容を決め、一定の活動協力費を徴収することで、登録されたサービス提供者を派遣するもの。(2)、(3)については活動マニュアルを作成している。
(4)啓発・相談業務としては講習会、見学会、相談会を開催している。例えば「健康寿命を延ばす」というテーマでは、講師に80歳代になっても元気な方を選ぶなど、聞く人の興味が持てるように配慮している。

 運営体制は、高齢者支援委員会のもとに、5〜6人で構成するコーディネーターを置き、委員会で専用の携帯電話を購入して、2週間単位でコーディネーターが持ち回り事務局としている。受付時間は月曜〜金曜の9:00〜13:00としている。
 予算は、管理組合から年間10万円を拠出、(3)助け合いサービス業務の活動協力費の20%を合わせ、携帯電話料金、保険、印刷物などの費用に充てている。
 アンケート結果(平成25年1月)では、支援制度の認知度は「知っている75%」と相応に高まっている。見守り支援者、助け合いサービスの提供者としての協力の意向は、協力する、内容がわかれば協力する、合わせて1/4程度で、まずまずであるが協力者を増やしていきたいと考えている。
 
 今後の展開は、認知症・孤独死への対応として、管理組合でどこまで見守りができるか検討していくことと、今後介護保険制度改正により地域に業務が移管される状況の下、地域の関わりをどこまで行えるかを検討すること。
 隣接するマンションでは4件の孤独死の発生により規約を改正、必要な場合は専有部への立ち入りも可能(結果の補修費用は管理組合が負担)としたが、これを参考にどこまでできるか検討したい。
 認知症については、安心して徘徊できるまちを目指すこととしているが、このためには地域とのかかわりが不可欠となってくると考えている。

4.介護保険制度改正に伴う地域とのかかわりとして

 平成27年の介護保険制度改正により、平成27〜29(2015〜2017)年度までの3年間で、要支援1、2に該当する人への介護サービスの大半が介護保険から、「介護予防・日常生活支援総合事業」として、地域の福祉行政に移管されることになっている。

 特に介護予防と生活支援サービスについては内容的には今取り組んでいる事業に他ならないと考えている。改正の目的は介護費用を抑えるため、介護度の低い人へのサービスを地域のボランティアを中心とした住民同士の支援に移そうとしていると言える。

 最近「地域包括ケアシステム」という言葉が出てくるが、サービスのうち医療、介護は専門家に頼るもので、その他の生活支援と介護予防が地域に任されることになる。地域で、市町村単位、小学校区単位、自治会単位の各層に分けて様々なサービスを行うことになる。この事業の主体は、自治会、管理組合などのボランティアが中心になって行い、行政はそのバックアップを行うと言える。

 実際に松戸市のモデル事業として交流サロン事業に取り組んでいるが、週1回2時間以上の行事を行い内10分以上の介護予防対策を行うものであり、その地域の参加希望者を皆受け入れる必要があるが、参加者の意見として「よそ者は入れたくない」というものがあった。市のモデル事業に採択をされたが、この事業には無理があった。

 厚生労働省から「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」が提示されているが、その要旨は(1)市町村主体の協議体を設置し、(2)生活支援サービスコーディネーターを養成することとなっている。マンションにおいても該当するような意識を持つ人をどう増やしていくかが課題となっている。松戸市でも協議体として「松戸市支え合う地域づくり協議体」を設けたが、協議体には、実際に活動を行っている立場としての応募は受け入れられなかったと感じている。

 地域におけるマンションの役割は、マンションがコミュニティの基本単位として活動し、その地域をリードしていくことが必要と考えている。現在は先行するマンションで情報交換会を作り、その範囲を徐々に拡大し最終的には地区内をまとめようという活動を行っている。まずは、情報交換から進めている。

5.まとめとして
(1)管理組合として、できること、できないことを明確にする。
(2)できないことは、地域の支援組織を活用する。
(3)最も大事なことは、個人個人の思いを、組織としての動きにつなげていくこと
 マンションにおける第3層(自治会単位)コーディネーターを発掘することである…
として、本日の講演を終えた。

主な質疑等

Q1:マンションの紹介で平均年齢があったがどうやって把握しているのか
A1:毎年居住者名簿を更新しており、その際に年齢を記入してもらっている。そして、その結果の統計データを公表している。提出率は90%を超えているが、このための努力は行っている。(名簿の活用事例を広報に掲載するなど)

Q2:「見守り活動マニュアル」を作成しているが、きっかけと経緯は
A2:本日参加の西山先生のお話を集約したもの。内容は簡単に、短くしてある

Q3:活動を進めていくうえで、住民の方にケアの活動の経験を持たれた方がいらしたのかA3:住民からは経験者であるとの申し出等はなく、民生委員の方の活動情報をもとにした。活動の全体的なとりまとめはマンション管理士の仕事と考えている

 講師から、こういった活動で補助金を受けるといろいろと義務が発生するが、この発生する義務を、我々は活動の目標としており、成果を広報に掲載するなどしている。と、補足があった。

Q4:活動協力費の実績はどれくらいか
A4:実際の利用は年に5〜6件で、将来に向けた仕組みづくりと考えている

Q5:お茶サロンの男女比と、内容は本当に自由なのか誰かコーディネートしているのか
A5:運営方法は、会をまとめる役割をしている女性がいる。メンバーは固定化して8〜9割は女性でこれが課題になっている

以 上
中西先生