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2015.02.19
 月島区民館 
「片付け備蓄が命を繋ぐ」
講師: 家庭備蓄アドバイザー  岡部梨恵子氏

 第33回勉強会は、家庭備蓄アドバイザーの岡部梨恵子氏を招いて防災備蓄に関するお話をしていただきました。当日の出席者は約20名で、恒例の冒頭自己紹介で既に防災に取組んでいる方も多数来場していただいたことがわかりました。

 岡部氏は、日本災害食学会認定備蓄専門委員であり、整理収納アドバイザー、ファイナンシャルプランナーの資格所有者でもあります。岡部氏のお話で、家庭での備蓄の置き場所や購入資金の確保にこれらの資格が役に立っていることが理解できました。

■「非常食」と「防災食」の違い
 「非常食」といえば、乾パンがその代表。いざという時の備えとして、保存性が最重要視されます。しかし、災害に見舞われた過酷な状況でこそ、しっかりと栄養を取る必要があります。日本栄養学会は、保存性と栄養価・食べやすさ(美味しさ)を兼ね備えたものを「防災食」と名付け「非常食」と区別しています。

■家庭における防災備蓄の障害
 防災備蓄に関心はあるもののやっていないという人の多くが、「置き場所がない」ことをやらない理由にあげます。このため備蓄の前段として「片付け」が注目されます。実際、片付けを前面に出したセミナーには、都内での開催にもかからず全国から参加申し込みがあったそうです。

 物がなかった時代の「片付け」とは収納場所にしまうことでした。しかし、物が溢れる今は、処分(捨てる、あげる、売る等)することに変わっています。1年間使わなかった物は、そのほとんどが永遠に使わない物です。家中の物全てに付箋を貼り、使ったら付箋を剥がすことを1年続けることで、1年間使わなかったものがわかります。
 岡部氏の経験則では、家中の6〜7割は使わない物だそうです。それだけの物を片付けたら、防災備蓄の収納場所は容易に確保できます。岡部氏のご自宅の片付けビフォー・アフターの写真はたいへん説得力がありました。

■防災備蓄品の選定にあたって注意すべきこと
 一般的に備蓄品は3日分と言われていたが、東日本大震災で被災した仙台市は、震災後1週間分の備蓄を推奨しています。人口が少ない東北でも支援物資が被災者に届くまで1週間もかかるということです。人口が多い都心では、必要な物資は膨大な量となり、その輸送・配布の混乱は東北の比ではなく、家庭備蓄は必須と考えるべきです。

 一口に防災備蓄と言いますが、必要な物は季節によって異なります。寝る時にしても、冬は防寒性の高い寝袋があると便利で、夏は虫よけの蚊帳があると安心です。真夏と真冬両極端な環境を考慮して備蓄する必要があります。

 東日本大震災における浦安での被害で、災害で下水管も使えなくなることも知られるようになりました。しかし、大災害ではゴミ収集車が来なくなることまで気付いている人は、そう多くないと思います。備蓄品は、なるべくゴミが出ない物を選ぶよう工夫しましょう。

■冷蔵庫は立派な備蓄場所
 冷蔵庫は元々食品が詰まっているので、備蓄場所として有効です。強い揺れで転倒したり中の食品が破損しないよう、しっかり固定しておきましょう。

 庫内に保管するときはガラス等の割れる器は使わないのが無難です。
 いざ震災が発生して停電したときは、氷を器に移して飲料水にします。また、保冷剤を入れておけば、夏場は1日、冬場3日くらいはクーラーボックスとして使えます。

■ローリングストック
 食料の備蓄は、賞味期限が古い物から順に消費して新しい物を補充するローリングストックが基本です。コンビニの飲料用冷蔵庫は、店員が裏から補充してお客さんが前から取り出し古い順に売れていく、ローリングストックに最適な収納棚なのですが、家庭にこのような便利な物はなかなかありません。引き出しの手前に古い物がくるように、奥に新しい物を補充するのはたいへんです。

 そこで、岡部氏が推奨するのが、横並び収納です。一日分の食料をプラスチックケース等に詰め、7日分の備蓄パックを本棚や収納棚に横一列に並べて収納します。これであれば、古い順に並べて横ずらしで容易にローリングストックが出来ます。

 救援物資では、野菜、牛乳、くだものが届き難いそうです。そこで、備蓄パックには、野菜ジュース、ロングライフ牛乳、くだもの缶詰を入れておくことを奨めます。
また、子供がいる場合は、両親ともに帰宅困難となる事態を想定して、子供だけの時でも備蓄パックを取り出して食べるよう日頃から指導しておくことが肝要です。

■パッククッキング
 災害時の調理方法として、「パッククッキング」があります。これは、ポリ袋に食材を入れて口を縛り、熱湯につけて調理する方法です。鍋とカセットコンロがあれば出来る手軽さと、ポリ袋を浸す熱湯が食材に直接触れず何度でも調理に使える(排水が出ない)ところが災害時に向いています。ご飯と同時に他の料理もでき、避難中でも暖かく美味しい食事を取れます。
 
 カセットコンロのガスボンベの持続時間は強火で1時間弱です。これを目安に避難期間に必要な量を算出して備蓄してください。ガスボンベの備蓄は40℃を超える場所に置かないように注意しましょう。


【Q&A】
Q:パッククッキングは保温鍋を使うと燃料の節約になるのでは?
A:ご飯は芯が残る懸念があります。

Q:管理組合で防災用に薪と炭を備蓄しているが、これでパッククッキングは可能か?
A:災害時は、贅沢は言えません。お湯を沸かせるものであればなんでも出来ます。ただ、薪・炭は温度調整が難しいので、ポリ袋が直接鍋底に触れないよう陶器の皿を沈てください。

Q:ポリ袋はどんなものでも良いのか?
A:スーパーのレジ置いてあるロールポリ袋が最適です。百円ショップでも売っています。透明な袋より半透明のほうが良いです。

Q:災害時といえばトイレが一番心配だが、何か工夫はあるか?
A:排水管がマンション内外ともに破損している可能性があるので震災後は何も流さないでください。短期間であれば小便はポリタンクにためておく方法で簡易トイレの消費を減らすことができます。簡易トイレの廃棄は、臭い漏れがないBOS袋に密封すると良いです。

(記録担当:大滝純志)
                  
講演の模様