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2013.10.17
月島区民館
           

講 師:千田 節子氏
東京湾岸集合住宅ぼうさいネットワーク代表幹事

資料1 マンションコミュニティにいま思うこと
資料2 千田氏紹介記事(江戸川区聞き書き研究会2013年8月)
資料3
 東京湾岸衆望住宅ぼうさいネットワーク パンフレット 
「マンションコミュニティに今思うこと」

 第23回勉強会は、「東京湾岸集合住宅ぼうさいネットワーク」代表幹事の千田節子氏を講師に招きました。40名の方が聴講に来場してくださいました。防災の第一人者が講師ということで、冒頭15分間の来場者自己紹介では、防災士という方が多くいらっしゃいました。しかし、今日は防災の枠を超え、自らの三十余年の活動を振り返ってマンションコミュニティについてお話しいただきました。

○活動の始まりは子供たちの「ふるさと」創りだった
 団塊の世代が家族を持ち始めた頃、今まで人が住んでいなかった郊外や埋め立てた湾岸の造成地に団地が造られていった。埼玉県北部の北坂戸団地に新規入居した千田氏は、「まち」として全く歴史のないところで、「『まち』はどのようにして『まち』になるのか」をつぶさに見届けることになったと語った。まず子供たちが友達となり、次いで子供の母親同士の会話がはじまり、生活の情報交換が始まると瞬く間に「まち」になったそうです。
 北坂戸団地での4年の生活の後、なぎさニュータウン(江戸川区)に転居した千田氏は、そこでも子供たちから「まち」が始まることを目の当たりにして、子供たちの「ふるさと」創りを始めたとのこと。手始めは子供たちに本を読ませるための文庫づくり。その活動は、読み聞かせ・人形劇・絵本づくり・コンサート・古本市・映画上映・観劇と拡大を続け、行政に図書館を2館も設置させるに至ったそうです。「今の母親は『子供がいるから無理・・・』と言うが、子供がいたからこそ様々なことが出来た」という言葉が印象に残りました。

○地域へのかかわり
 なぎさニュータウンが10年目を迎えた頃、管理組合(自主管理)の事務局に関わることとなったとのこと。関わって数年後に作成したという自主管理7か条は自主管理に限らず活用できる内容です。

1.複数合議の原則(時間をかけても理事、特別委員が共通認識をもつ)
2.誰でも自由に発言できる(特定の人に偏らない)
3.お互いの特技、分野を尊重し、高めあう
4.記録に残す(必ず議事録をとり、全部の理事、委員に配布のこと)
5.理事長と事務局の交換日誌(現場の状況を見てきたように把握する)
6.可能な限りお茶、お酒の場を設ける(外部での飲食禁止、密室化を避ける)
7.任期終了後の理事や委員を特別委員会や防災会へ誘う(人間関係を持続)

 阪神大震災の後、自主防災会として全国に先駆ける「なぎさ防災会」を立ち上げ、震災被災地で避難先を書いた看板が掲げられていたのを参考に、避難先を書いて玄関ドアに貼るマグネットシートを考案するなどの成果をあげたそうです。防災活動の取組みをとおしてまとめられた6か条は、まちづくりの取組み姿勢とすべきものでもあると感じました。

1.たのしくなれば防災じゃない
2.何もやらなきゃ何も起こらない
3.一つ釜の飯を食べる(ついでに飲む)
4.自分たちのまちは自分たちで守る
5.それは無理だといわない
6.ナリで他人を誘う(目立つ姿で注目を集めること・・・と理解)

 断水時、上層階への水運びを楽に出来ないかと思い、30mのロープを買って、10階で地上からペットボトル2本を引上げる実験もしたそうです。災害時のトイレ問題の解決策として、おがくずに防臭効果があるという説明の際には、実際に試して効果を確認した人の行動力を賞讃。
 実際にやってみて効果があったと言われると、説得力があります。

○なぎさニュータウンのいま
 最後に、なぎさニュータウンの防災会、麗樹会(高齢者の会)、緑育会(植栽管理の会)等の活動の様子を写真で紹介してくださいました。コミュニティ活性化の仕掛けは、当初は子供たち向けでしたが、今は高齢者が対象になっているとのこと。多様な仕掛けでコミュニティが活性化しているが、中には地域コミュニティとの関わりを自ら拒否し続けて孤独死する人もいたそうです。「本人は本望かもしれないが、周囲の迷惑は膨大」ということは、もっと広めたほうが孤独死の抑止になりそう。また、高齢者と接するときには老化の可能性を考慮する必要があるとのこと。声をかけて無視されたときは、耳が遠かったり視力が落ちて気付いていない可能性があります。このような講演を聞くか、高齢者と接する機会がなければ考えもしないことだと思います。「防災は災害時に何かすることではなく、日常、隣人を大切に思う心」と千田氏。大切に思うとは、相手にどのように対応したらよいか知るよう努めることでもあると感じた勉強会でした。


【Q&A】
1.仕事を持つ女性には、ママ友(地域とのつながり)が出来にくいと言われるが対策があるか?
A:社会進出を果たした女性は、地域との関わりより自分磨きに走る傾向がある。一方で専業主婦でも家庭(家事)優先を理由にして管理組合の自治会役員就任を断るケースが多い。専業主婦の場合、外に出ることについて家族の理解も必要だが、いずれの女性にとっても、仲間が出来て楽しく取り組めることが大切。

2.機能していない植栽委員会を活性化するにはどうしたらよいか?
A:緑育会は28年続いている。行事日程を早く決めて周知すると予定が立てやすく参加し易い。また、むきになって取組まないほうがよい。緑育会は仕事が終わった後に必ず飲み会がある。終わってからの楽しみは重要。

(記録担当:大滝純志)
玄関ドアに「避難しています」などの表示をマグネットで付ける
「おがくず」は防臭効果が高く、災害時のトイレ消臭に使えると説明