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2013.05.23
月島区民館
マンションの高齢化対策〜高齢者見守りをどう進めるか
講 師:日本住宅管理組合協議会 理事 西山博之氏
ゲスト:マンション管理士 中西 博氏
「マンションの高齢化対策 〜高齢者見守りをどう進めるか〜」
第21回勉強会は、高齢化対策をテーマに取り上げました。来場者数が50名に及び、本テーマへの関心の高さがうかがえました。
講師としてNPO法人日本住宅管理組合協議会理事の西山博之氏をお迎えして、高齢化対策と高齢者見守りの多数の事例を紹介していただきました。
次いで、西山氏を師と仰ぐマンション管理士の中西博氏が、自身が居住するマンションで実践した高齢者支援活動を紹介しました。
西山博之氏の話:
過去には、高齢者を家族・親戚で支え、隣近所と連帯していたが、無縁社会と言われる現在は高齢者の夫婦二人や独居世帯が増え、その支援は自治会・町会・行政が行っている。
マンションにおいては、孤独死の発生が資産価値に影響することから、管理組合が高齢者支援に取組んでいるところがある。最近は、都市部の自治体が、管理組合を自治会・町会のような各種行政サービスの提供先として認めはじめている。
高齢化の影響はマンション全体に及ぶ問題なので、管理組合も主体になってその対応をしなければならないと考える。ただし、管理組合が立ち入る領域は、支援を要する人の発見までにととどめ、発見した時は「地域包括支援センター」(行政)に通報し専門的な見守り機関にゆだねるほうがよい。専門的な分野まで深入りすると長続きしない。
行政の高齢化支援事例として多摩市の2事例を紹介する。一つは、新聞販売同業組合と協定を結び、新聞配達員が配達の際に新聞が溜まっている等の異変の有無を確認する事業を実施している。さらに、高齢者や障害者向けに万一の救急車搬送を迅速に行うための「救急医療情報キット」を提供している。
管理組合の高齢化対策の事例として、まず、「居住者台帳の取扱細則」を紹介する。高齢者の居住実態把握には個人情報保護の観点からその取扱い細則は必要だ。また、住民名簿の鮮度を保つため、1年任期輪番制で毎年交代する役員の就任最初の仕事が「居住者台帳」の回収としている管理組合がある。毎年、新任理事が担当住戸から居住者台帳を回収し、そのまま新理事長に渡す。新理事長が台帳原本を厳重に保管し、それ以外の人はコピーを持たない。前年回収した台帳は前理事長が任期の終了とともにシュレッダーで裁断処分する。
「高齢化対策や支援は必要と思いつつも取っ掛かりに悩んでいる」という管理組合に向けて支援組織の立ち上げ手順を紹介する。
一つ目は、築42年で、団地内に各種組織が出来ている管理組合の事例。平成20年度の団地管理組合通常総会で「高齢者見守り支援協議会」の設立が承認され、管理組合の他、団地を考える会、自治会、災害協力隊、親睦会といった既存団地内組織から2〜3名の人員を選出して協議会を発足させた。
平成21年度に高齢者世帯等を対象に「安心登録カード」の記入依頼・回収(提出は任意)活動を実施した。
二つ目は、管理組合と自治会が並立して取り組んでいる事例。この管理組合では11名の理事の内2名が福祉・高齢者担当理事に就任する(平成19年度総会で決定)。理事会の下部組織として福祉・高齢者委員会(約10数名が委員として活動)がある。この委員会の下部組織として、定期的に管理組合集会所で「お茶飲み会」を開催する組織を結成。その後、お茶のみ会開催組織の名称を「ふれあいの会」と命名し地区の社会福祉協議会から交付金をうけるようになり、活動内容が充実した。福祉・高齢者委員会は他に認知症サポーター要請講座の開催、成年後見制度の講習会の開催、見守りネットワーク形成に向けた検討等に取組んだ。
一方、自治会は、団地居住者を対象とする「助け合いの会」を結成し、有料(5百円/1時間)で買い物・清掃・ごみ出し等の生活支援を実施している。支援スタッフは団地内に居住する中学生以上の者で、4百円/1時間の活動費を支弁している。
管理組合の事例として紹介された以上の事例は、いずれも複数棟の大規模マンションのものである。小規模マンションにおいては、居住者が少ない故に役員確保も難しく高齢者対策もままならない実態がある。このため、管理組合・自治会・町会・行政等の関係団体と一層の協力強化を図る必要があるし、小規模管理組合にも適用できる対策を見出し普及させていきたい。
中西博氏の話:
自身が居住するマンションにおいて発足した高齢者支援委員会に参加した。委員会メンバーは理事会役員2名以外に居住者から公募して、民生委員・市民後見人の会役員、マンション管理士が参加した。
平成23年度1年間(月1回のペースで検討会を開催)かけて、高齢者支援活動として何をすべきか活動の方向性を検討した。具体的には、支援事例の調査→住民へのアンケート調査→管理組合広報紙への記事掲載→施策の企画及び理事会への提案・予算要求等という手順で進めた。翌年度からは、名称は同じでも、検討委員会から運営委員会に移行した。
運営する業務は、ふれあいサロン事業、高齢者見守り支援事業、助け合いサービス事業、啓発・相談事業の4事業で、助け合いサービス事業以外は平成24年度から開始した。
ふれあいサロン事業は、「お茶サロン」とい名称で、毎週月曜日の午後にお茶のみとおしゃべりで居住者が交流する場を提供するもの。運営資金は、管理組合から年4万円の補助と寄付金で賄っている。資金面もさることながら、積極的に運営にかかわってくれる世話人の存在が大きい。しかし、参加者する人は元気で比較的社交的な高齢者の方々で、本来参加してほしい人(こもりがちな人)が来ない。だれでも来やすい雰囲気や仕組み作りが課題。
高齢者見守り支援事業は、高齢者支援員会メンバーがコーディネータとなり、一般公募の見守りサポーターと共に住戸を訪問して「見守り支援個人カルテ」を作成した。その後、サポーターがカルテを基づき見守り業務を開始。サポーターの募集時に、事故等が起こった際の責任問題を懸念して応募に躊躇する人が多かったので、支援委員会が組織として問題に対処することを表明するとともに「見守り活動マニュアル」を作成して懸念の解消を図った。
啓発・相談業務は、平成24年度に高齢者向けの講習会を2回開催した。また、毎月第一月曜日の午後に「よろず相談会」を開催している。
助け合いサービス事業は、マンション内での生活相互扶助でコミュニティを深めることを目的として、25年度からの実施を目指している。利用意向や実施希望サービスの把握するための住民アンケートを実施し、利用方法やサービス提供者(助ける側の人)の資格や援助活動費(報酬)等を取り決めた実施計画を策定まで進み、今後、PRやサービス提供者の募集等を実施する予定。
Q&A:
1
Q:住みやすいマンションほど居住者の入れ替えがなく、毎年平均年齢が一歳ずつ上がっていく。高齢化問題は管理の担い手確保の問題と考え、子供や孫が住みつくよう誘導に取組んでいるが永続させることには限界を感じる。担い手確保は、どのようにしたらよいのか?
A:若い人を誘致するための改装を大規模修繕に実施するなど、ハード面の対策も必要。
2
Q:高齢者の支援として、高齢者を狙う犯罪から守ってやることも必要と思う。犯罪がらみ等、市民だけの対応だけでは限界がある事案については、行政が見守りをする人を支援すべきと考える。行政の関与をどのように考えるか?
A:行政は活用すべき。実際に様々な仕組みが用意されている。高齢者がこれら多様な支援を使いこなすことは難しいので、使い方を教えることも支援のひとつ。
3
Q:中西氏の事例発表は、運営面の話が多く参考になった。高齢者支援委員会の活動は、自治会の活動範囲と重複しそうだが、自治会との関係はどのようにしているのか?
A:講習会の開催案内を近隣町内会に案内するなどの関係を持っている。
所 感:
西山氏が今日の勉強会のために用意してくださった事例紹介資料は61ページの大作。管理組合の高齢化対策や見守り事例がたくさんあることを知り、実は案外、敷居の低いテーマなのかとも思えた。中西氏の事例発表でも最初の取っ掛かりは、事例収集とのことだった。最初の一歩を踏み出すための勢い付けとして、今回のような勉強会に積極的に参加して多くの事例に触れることを薦めたい。
(記録担当:大滝純志)
西山博之氏
中西 博氏