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2013.04.25
月島区民館
マンションコミュニティの歴史を考える
講 師:(株)TALO都市企画代表 飯田 太郎氏
ゲスト:マンション管理士 久保 克裕氏
初期の団地ではマンション管理とコミュニティは一体で、 管理会社もコミュニティまで含んで管理を考えていたと言います。 改めて、マンションコミュニティの歴史を振り返りたいと思います。 久保さんのお父様は、当時の第一人者です。
「マンションコミュニティの歴史を考える」
マンションコミュニティの歴史を振り返ってみることから、今の課題解決を見つけようということで、節目である第20回勉強会にふさわしいテーマが選定された。
参加者は、管理会社やマンション管理士等管理のプロが比較的多く、総勢30名を超えた。
講師の(株)TALO都市企画代表飯田太郎氏を中心に、ゲストとして、1970〜80年代、当時の第一人者久保峰雄氏の子息久保克裕氏及び雑誌「マンション住・人」の編集長であった渡辺恭子氏から話を伺った。
特に、久保克裕氏からは、父君の遺産である30点ほどの貴重な文献、資料の展示紹介があった。
飯田太郎氏の話:
マンションコミュニティは、マンションができた時から大きなテーマであったと前置きの上、1969年の国民生活審議会コミュニティ問題小委員会において、高度経済成長と都市化による従来型の地域共同体の崩壊から、新しいコミュニティ形成の必要性が議論され、その翌年、マンション管理の本質はコミュニティだということで「東急コミュニティー」が設立された。1970年当時のマンションストック数は、まだ13万7千戸であった。
1979年、高層住宅管理業協会が設立され、共同住宅でのコミュニティのあり方や区分所有住宅の維持管理について検討された。現在加盟約400社中コミュニティの冠をつけた企業は沢山ある。
1983年の標準管理規約ができる前に、京都の嵐山ロイヤルハイツでは、居住者が集まって規約を作った。京都のコミュニティ組織の伝統について歴史的説明をした後、同一地域、場所に住む人々が生活利害の共通のコンセンサスを持ち、共通の行動をとろうとすることに、コミュニティの意味があるとした。
1985年、久保峰雄氏が「知らないと損するマンション住まいの基礎知識」を著し、“新しいコミュニティづくりをめざして”ということで、多様な考え方やニーズが存在する中で、マンションライフをどのように過ごすかについて、居住者間のコンセンサスを作り上げることは、マンション生活に欠かせないとした。
また、1989年、延藤安弘氏は「異文化」を持つ者同士の対立といがみ合いを解消するための「わかりあえる関係」をいかにつくり得るかが、マンション管理とコミュニティづくりの基礎要件であるとした。
日本は、戦国時代から江戸幕府へ、明治維新、戦後の3回の大きな変革をしたが、日本の地域社会は解体していない。しかし、高度成長によって共同生活が壊され、コミュニティ見直しの必要性は高まっている。
久保克裕氏の話:
幼少の頃から父親の後を追っかけ、色々な管理組合にも出入りし、今はマンション管理士として活躍中とのことである。そこで、父親とのかかわりと経緯の紹介があった。
1976年、生協消費者住宅センター専務理事として、今でいうマンション管理士や管理会社的立場で、管理組合の相談に対応していた。
1985年8月、“新しいコミュニティづくりをめざして”を発刊、その前後からマンション管理の研究を始めた。当時はコミュニティづくりに熱心で、ヨーロッパ的マンションを日本に根付かせようとしていたと思われる。
主として自主管理を支援、色々勉強したいというマンション、自分たちで規約を作りたいというマンションも数多く出てきたが、その辺の経緯は30冊ほどの資料を見て欲しい。
2001年、マンション管理適正化法が施行された頃から、コミュニティに興味を失ったようにも思える。自主管理が減っているとも言えるし、今までのおおらかな時代から、適正化法がコミュニティを弱くしているとも考えてしまう。
渡辺恭子氏の話:
広告代理店に勤め、高層住宅関係の仕事や、某不動産会社の会員誌の編集をしながら、マンションに深くかかわってきた。生まれた時からマンション住まいでもある。
マンション管理とコミュニティの本として2004年発刊の「マンション住・人」(有朋社)の編集長もやった。「マンション生活はもっと楽しくなる!」を信条に、管理組合と接触するのに苦労しながら、色々な取材活動を行ってきた。その時のアドバイザーが飯田さんである。マンションは売り過ぎ、これからはコミュニティの時代だと思っている。
Q&A:
1.Q:セミナー等で管理会社や管理士は知恵をつけていっても、住民意識は変らない。それをどうしたら良いか?
A:マンションの中では法律用語を使わずに話し合う、雑談でも良いから話すこと。
2.Q:コミュニティは組織論か、バラバラでも良いのか?
A:チェーン的なもの、仲良しクラブとは差がある。共同、協同、協働が理想で、コミュニティにつなげる。コミュニティが良いということは立派な組織があるということではない。何が正しいか、どうあるべきかよりも、人が集まることではないか。
3.Q:トラブルが増えるほどマニュアル(ルール)を作りたがるが、その流れは良いことなのか?
A:コンセンサス(わかり合う)世界に指向を持って行くことがベターではないか。
感想:
1.管理士には合意形成能力が必要。コミュニティがあればトラブル解決は良い方向に行く(可能性が高まる)。
2.防災対策もコミュニティができていれば対応し易い。管理会社もそういう視点で取り組んでいる。リーダーにどれだけ発信力があるかもかかわってくる。
3.運命共同体意識がなくなっている中で、コミュニティ形成は難しい。お互いが知り合っていないと安心してつき合えない。不参加者は村八分というと、言い過ぎか。良いコミュニティは一人一人が尊重される世界だと思う。
4.昔はリーダーシップのある役員が多かったと思う。これからはなお一層それが求められる。
5.今は過度期、防災や高齢者を考えれば、10年もするとコミュニティ意識も変わるのではないか。
6.コミュニティというと難しいが、挨拶がコミュニティの始まりだと考えれば良い。
(記録担当:中西博)
飯田太郎氏
久保克裕氏
「マンション住・人」について語る渡辺恭子氏
進行は、いつもどおり廣田代表
過去のマンション関連書籍の数々
この本は久保氏のお父さんが書かれたもの