参加者が増え続け50名近くになった。
最近の恒例で、新しく参加した人の簡単な自己紹介から始められた。10名前後おられたが、テーマのせいか、やはりマンション管理士が多いようである。
前座として、派遣講座のレパートリーから1件、10分程度のプレゼンが行われた。
大滝純志会員により「小規模マンションにおけるコミュニィ」というテーマで、小規模とは(いくつかの分類事例を紹介後、今回の視点ではおおむね50戸以下)ということから始まり、小規模マンションゆえの特徴とその原因分析、良好なコミュニティとは何か、という順に進められた。
本番の磯野重三郎講師は、大手ゼネコンの現場監督として、マンションでは約50棟(2,500戸)の経験を含め、建築業界の裏側を知り尽くし、会社側と衝突、早くから独立し、マンション管理士となってからは、主として大規模修繕工事のコンサルタントを行うようになったということである。方法論は提示するが、決めるのは管理組合、これが自分の信条だと強調、この辺りが特級建築士と自称している所以かも知れない。なお、日本マンション管理士会連合会の副会長の立場でもおられる。
講演の内容を簡単に言ってしまうと、これまで管理組合からの多くのSOSに応えて、管理組合と共に、大規模修繕工事を成功させた事例から、談合の芽を摘み、不正工事を見抜き、大事なお金を有効に使って、マンションの未来を切り開く知恵を持って欲しいということであった。これを5つの事例から紹介されようとしたが、話に熱が入り過ぎて、ケース1だけになってしまい、ケース2〜5は資料参照となってしまった。
ケース1:大規模修繕工事を積立金の値上げをしないでできるかどうかチェックしてくれ!
ケース2:管理組合の専門委員会が相談に来た!
ケース3:管理組合の理事から管理会社の工事費の決め方が何か変?
ケース4:採用のコンサルタントが監理辞退!
ケース5:管理会社から新築時建設会社の子会社に!
ケース2〜5は、管理組合の誰かが何かおかしいと気づいたケースである。
土木建築には談合が多く、どこかで話し合いがなされている。コンサルタント、設計事務所、建設会社、それらが複雑にからんでいることもあるが、最後はほとんどがばれる。
管理組合は現金払い、払う方も自分の金ではないと思っているから、引っかかる可能性が大きくなる。自分の金だと思ってくれ!
専門家ではない管理組合、こんな良いお客はいない。信頼できる専門家を活用して、区分所有者の普段の努力と、事前に不正の芽を摘むことが肝要である。
ケース1で、大規模修繕工事の実例が詳しく紹介された(平成10年1月〜平成20年8月)。
@ コンサルによる長期修繕計画作成(積立金7,000円→10,000円)
A 修繕専門チーム設立(コンサルより13,000円値上げ案に対し、値上げしないで大規模修繕工事を行うための検討)
B コンサルより一般修繕見積7,500万円(長計では11,500万円)提示され、長計その他で不信感募る。
C コンサル変更
D 屋上防水、火災報知設備等緊急工事実施(組合員に対する大規模修繕工事の予行演習)
E 工事準備を含む管理規約改正
F 大規模修繕工事実施計画(2年9カ月かけて)
G 管理費に入っていた駐車場使用料の一部を修繕積立金に移管
H 大規模修繕工事の実施(10か月)
I エントランスホール、エレベータリニューアル、集会室内装等改良工事実施(7か月)
業者選定に当っては、18社引合→15社応募→7社に絞込み→5社ヒアリング→3社再ヒアリング(仕様変更のため)の経過を辿った。書類審査でのポイント、ヒアリングの重点事項の説明があった。特に、ヒアリングは現場責任者に行わせることを強調された。また、住民対応のため管理会社から有償で1人提供してもらったとのことである。
時間が掛っても、十分な広報を行い、組合員が納得できるようにすることが大事、専門委員会には女性にも入ってもらうこと、現場責任者が決まったら前任の管理組合に行って話を聞くこと、改良工事を加えたため資産価値(市場価格)の向上が見られたこと、などを結論として講演を終えた。
Q&A
@ Q:談合をどうやって防ぐか?
A:会って話しているとわかる、感覚も大事、信頼関係を裏切らない。
A Q:コンサルの選び方?
A:難しい、コンサルを育てるのが私の仕事。一方、マンション管理士がどういう位置づけでタッチするのか、そのことも考えている。
B Q:女性の採用理由は?
A:こうしたいという意思を大切にしたい。男性では気が付かない指摘がある。
C Q:管理会社が設計を無料でやる、施工会社に入らないと管理を止めると言っている。どう思うか?
A:管理会社には任せないという意思で進める。
D Q:経済調査会から修繕積算資料が出されている。適正価格とは?
A:項目毎には違いが出るかも知れないが、総計は意外と合っている。
E Q:「大規模修繕工事を適切に」とあるが適切にとは?
A:住みやすく長くもたせるが主で、組合員の満足は従。
F Q:ケース1と似たようなマンションに住んでいるが談合の兆しが見えなかったが?
A:色々なケースがある。
G Q:生活しながらの工事なので、そういう所への配慮が必要では?
A:その通り、その対応要員として管理会社からの派遣を求めた。
H Q:コンストラクションマネージメント(管理組合が下請けと直接契約し、その管理を元請に保証させる)が広がらない理由は?
A:日本にはなじまない。
I Q:最初に見積書のどこを見るか?
A:項目別金額を見た後に、数量表を提示しているので単価を見る。
J Q:仕上げはどのように見るか?
A:最初の段階で仕様を決めている。
(記録担当:中西博)
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