改めてコミュニティ行事を企画しなくても、マンション管理の中にはコミュニティ形成の場面が沢山あるという一例です。
今回はコミュニティにも関わる2つのテーマでお話を伺いました。
テーマがタイムリーであったせいか、参加者は40数名、部屋は超満員となり、初参加者の人たちだけの簡単な自己紹介から始まりました。
第一部 「一括受電」で電気料金削減
「居住者全員の理解を得て実施できるのは、まさにコミュニティの力があればこそ。」をメインテーマとして、中央電力(株)日向寺かおる氏、河原典仁氏が講師となり進められた。
マンションコミュニティ研究会発行の冊子「カードdeコミュニケーション」に関心を持たれ、現在サービスを導入している804の管理組合に配布されているそうだ。
一括受電は、工場やテナントビルでは普通に使われているが、マンションに導入され始めたのは最近で、中央電力としては2004年に関西電力の管内から始め、2011年末には5万所帯、今後100万所帯を目指しているとのことである。
1.マンション一括受電サービスとは?
中央電力が制作したDVD映像を紹介しながら、電気料金単価の高い低圧(個別)契約から、マンション内の電気をまとめて契約する一括(高圧)契約に関わる仕組み、サービスの内容、導入の効果などが紹介された。
2.一括受電の成り立ち
「こんな裏技がある」とマスコミで取り上げられたりしている。
当初は、専有部分が安くなる(4〜500円/月)と営業活動したが、現在は専有部分の安くなる部分を共用部分に充当して、共同の利益になる共用部分を削減するプランが主流となっている。
即ち、共用部分の電気料金削減である。今回家庭用電気料金が平均10.28%値上げといわれているが、使用電力により契約が3段階に分かれているので、共用部分だけを見ると、高いランクに入り、アップ率はもっと上がるだろう。
導入世帯のうち95%が既存マンションで、三菱地所レジデンスの新築マンションでは、ほぼ100%に導入されている。
3.全戸合意は大変な業務
(1)総会決議
「安く買う権利を行使する、それを中央電力がお手伝いする」ことなのだが、電力供給が従来の電力会社から中央電力に変わると誤解されることもあり、5%程度の意見者が出るのは普通である。
従来の電力会社からは、契約解除のためには全戸合意が必要と言われている。
一方、規約には共用部分の第三者使用として、電力会社の借室が記載されていることが一般的であるため、その改正も必要。
(2)個別説得(プロファイリング)
反対される理由には2種類ある。
@ 一括受電サービスの内容に不満。
A サービスは良い。でも理事会の進め方に不満。
これらには、
1)理事会がひるまないこと。
2)交渉人を立てる。少数の人の意見に耳を傾けなかったことでしこりが残る。翻訳してメッセージを両者に送る。
などの誠心誠意の対応でサービス導入につなげている。
最後に、「愛のあるお節介を心に届けることで、笑顔でつながるコミュニティを作ることが私の志事(しごと)です。」と締めくくられた。
4.Q&A
Q1:自由化・規制緩和でできるようになったのか?
A:規制はなく、昔から誰でもできることであったが、事業として誰も取り組もうとしなかった。 自由化が一括受電事業を可能にしたわけではない。
Q2:法体系はどうなっているか?
A:許認可制や資格というものなどはない。
Q3:低圧と高圧料金の7円の差、3割の差の拡大は?
A:今後その差がどうなるかはお答えできないが、弊社はお約束した削減率を維持する。
Q4:中央電力が倒産した場合は?
A:電気は止まることはないが、従来の電力会社に戻す手間は発生する。
Q5:マンションの戸数によるメリットは?
A:現行の設備にもよるが、40戸以上。
Q6:全戸合意は電力会社が設けた条件と説明されたが、電力会社がそう言える根拠は?
A:2重契約はできない(1戸だけ新しく引き込めない)。地域電力会社からは個別契約を残したまま一括契約をすることはできないといわれている。
Q7:区分所有法59条適用で全戸合意に反対した組合員を排除した例を聞いたことがあるが?
A:弊社の事例ではないが聞いた話によると、この件以外に共同の利益に反する行為の積み重ねがあったようだ。
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第二部 植栽管理でコミュニティ形成
『「緑(みどり)」でつなぐマンションの「縁(えん)」』をスローガンに、東邦レオ(株)栗原優香氏、藤田恵理子氏の両講師より、プロジェクターにより話が進められた。植栽をテーマとする会社だけに、感性豊かな素晴らしいコンテンツであった。東邦レオ(株)は、「生活環境への貢献」を目指し、
@ 緑・土壌の技術力
A 広場植栽の運営力
B 人を集め・つなぐ企画力
を3本柱に、樹木医・一級造園施工管理技士等沢山の技術者と全国展開により、都市緑化、屋上庭園、壁面緑化、菜園、インドア、マンション・団地外構などのGreen×Town化に取り組んでおられるとのこと。
1.これからのマンションの魅力は「コミュニティ」が鍵となる!
管理とは、単に暮らしていくための「管理」ではなく「経営」が必要と考えている。
「築15年目の樹木の管理費は、30年目にはいくらになっているか。」というクイズが出された。2倍という声が多かったが、大掛かりな剪定が必要なため、3.2倍だそうである。
次に、コミュニティ形成により改善されるマンションの課題として、
@ 管理組合活動の円滑化、資産価値の向上
A 住民間トラブルの減少
B 防犯、防災 ・・・・・
等の説明後、「緑」の力を活用して、「現在の管理費用以内で」、コミュニティ形成を行うのが同社のプランだという紹介があった。
2.植栽管理でコミュニティ形成ができるわけ
「コミュニティを作る」という、「形のないものへの予算化」は難しいが、植栽管理のコストダウンを図り、それをコミュニティに活用するという道がある。
緑とコミュニティの相性が良い理由として、
@ 世代、性別、経験を問わず楽しくできる
A 緑は、住環境における重要な要素・・・・・
等を挙げた後、植栽の自主管理は、季節ごとのイベントや草取り合戦などの清掃活動に結びつき、コストダウンの方法として、非常に有効だとの説明があった。
3.コミュニティ形成実践事例
縦軸にコミュニティ度、横軸に自主管理度のグラフを書き、具体的な5つの実践例がどこに位置づけられるかを示し、それぞれのマンションの特長と実施後の効果紹介があった。
@ 千葉県浦安市(築33年、519戸)
A 千葉県市川市(築30年、577戸)
B 東京都調布市(築5年、307戸)
C 東京都稲城市(築11年、845戸)
D 東京都足立区(築11年、408戸)
マンションによって必要な方法は異なるが、共通して言えることとして、下記を強調された。
@ 告知と広報をしっかり行う
A 住民主体の活動にしていく
4.押し花でカード作り
会場を6つのグループに分け、グループ内でコミュニケーションを取りながら、数種類の身近な植物の押し花を張り付け、一人一人がカードを作るワークショップが行われた。 イベントの1つの事例で行われていると思われたが、コミュニケーション形成に役立つことが実感できた。
5.Q&A
Q1:高木、古木の剪定はどうしているか?
A:樹形を維持する剪定、古木は改修という考え方を取ることもある。
Q2:高木の剪定について、組合員間で意見が分かれるのは常である。どうしているか?A:個人個人に説明しながら誠意を持って対応していく。
(記録担当:中西博)
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