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2014.10.30
 月島区民館 
最新のIT活用の居住者サービスとコミュニティ
株式会社 ファミリーネットジャパン

社長付き 小関 善照 氏

 マンションライフを豊かで快適にするIT技術も驚くほど進化しています。
 タッチパネルの簡単操作の電子掲示板や簡単予約システム、宅配のための安心オートロック会場システム等、最新の集合住宅向けITサービスの概要や活用事例についてお話頂きます。
資料1: 最新のIT活用の居住者サービスとコミュニティ

その他1:マンションコミュニティ研究会第10回フォーラム案内

その他2:団地新聞第6号(東邦レオ)

その他3:第1回マンション管理実務研修案内
2014.10.30月島区民館

「最新のIT活用の居住者サービスとコミュニティ」
講師: 株式会社ファミリーネット・ジャパン
社長付き 古関 善照 氏

 前回の勉強会では、会場から借りたプロジェクターが壊れていて説明資料を表示できないアクシデントに見舞われました。今回は大丈夫だろうかと不安でしたが、修理済で無事に開始できました。古い型ながら部品交換で見事に復活したのを見て、老朽化が始まった我身も部品交換で機能回復できたら良いのにと、プロジェクターが羨ましく思えました。
 そんなことを思った翌日の日経新聞朝刊一面トップに「心不全の心臓再生」の見出し。患者自身の細胞を培養して、心臓の機能低下部分を再生する事業を申請するという記事でした。技術の進歩は思ったより早く、人体のスペア部品を作る時代も案外近そうです。IT技術の進歩も著しく、第31回勉強会は最新の集合住宅向けITサービスの概要や活用事例をテーマに取り上げました。

 今回の研修会には約30名の方が参加しました。勉強会開始に先立つ恒例の来場者自己紹介では、「ITと言うだけで難しい物に思える」「わからないのでこれから勉強したい」と言う方が多くいらっしゃいました。


1. ファミリーネット・ジャパン会社概要

 古関氏が勤務する(株)ファミリーネット・ジャパンは、共同住宅向け専業のインターネットサービスプロバイダです。現在、約16万戸・1,700棟にインターネット接続サービスを提供しています。2000年10月の設立以来、順調に提供先を拡大しています。

 2000年頃はADSLが普及し始めた時期で、インターネットに接続する高速回線を備えることがマンションの価値を高めていた時代です。その後、急激に光ファイバーが普及し、今では高速大容量回線でインターネット接続出来て当然となりました。
 昨今の新築マンションには、電力消費データを活用したエネルギー管理システムやテレビを情報端末として活用するシステム等が導入されています。ファミリーネット・ジャパンも設立当時はインターネットへの接続環境の提供することに注力していましたが、現在はインターネットを利用するサービスの提供へのシフトを進めているとのことでした。


2. マンション専用ホームページ

 会社概要に引き続き、提供サービスの紹介がありました。
 最初は、「マンション専用ホームページ」です。これは、マンション居住者に限定した情報やコミュニケーションツールとして活用するホームページです。
 ホームページにアクセスできれば、いつでもどこからでも情報の閲覧が可能です。共用設備の予約機能を持ては、24時間空き状況の確認や予約をすることもできます。印刷物の配布だと印刷費がかかるうえに、紛失・廃棄すると見返すことができません。
 一方で、コミュニケーションツールとして設けた掲示板が居住者間の誹謗中傷の場となる可能性もあります。その対策として、運用ルールをしっかりと決めてから開設することが肝要です。
 ITに精通した居住者が中心となって管理組合独自でホームページを開設することももちろん可能ですが、この場合は、役員が交代すると衰退する傾向が見られます。その点、業者委託は、費用がかかりますが役員の負担を少なく継続することが出来ます。
 しかし、マンション独自ホームページが役員交代で衰退する現象は、コミュニティ研究会視点で考えると残念なことに思えます。ホームページを見た側が、作る側へ感謝、もっと見たくなるアイディアや出来る範囲での協力の申し出等を伝えていれば、役員任期が終わっても作成に関わり続けるのではないでしょうか。発信側から受信側への片方向の情報提供とならないことが肝要です。


3. スマート掲示板

 大型のタッチパネルモニターをエントランス等に設置して、居住者に情報提供するシステムです。もちろん、エントランス外側に設置して居住者以外への情報発信にも活用できます。インターネットに接続しているため、インターネット上の情報を表示したり、ネット経由で遠隔から表示情報の更新を行うこともできます。
 情報表示画面がタッチパネル式のため、利用者はメニューから表示する情報を選択することができます。工事や清掃等管理会社のお知らせにとどまらず、近隣商店街の特売情報等、紙を張る掲示板より小さいスペースで多彩な情報を提供できます。反面、タッチパネル式のモニターのため、テレビ用のモニターより高価になります。


4. KIOSK端末

 タッチパネル式画面で情報表示する点は、スマート掲示板と同じですが、利用者を識別する機能があるため、個人宛の情報伝達が可能です。FeliCa(交通系ICカード、流通系ICカード等)用のICカードリーダーを備えており、あらかじめ、ICカードの持ち主を登録してくことで、ICカードをカードリーダーにかざした人がだれかを認知します。 誰が使っているのかわかれば、その人への伝言を表示したり、共用施設の予約も簡単に行えます。パソコンやスマホが普及したとはいえ、持っていない人が皆無となったわけではありません。そのような方々のための情報端末としても期待されます。


5. スマート鍵(直達サービス)

 オートロックのマンションでは、配達先住戸が不在だと生協等の配達サービスが入館できないため、戸建て住宅のように玄関前に届けるということができません。早朝配達の新聞も、配達員が玄関まで行けず、毎朝、郵便受けまで取りに行かなければなりません。こんな不便を解消するサービスがスマート鍵です。
 このサービスを受けるには、暗証番号を入力するためのインターホンを一般の来客用インターホンと別にエントランスに設置します。こちらのインターホンでオペレータを呼び出し、提携した配達サービスの配達者であることが確認されると、配達者に暗証番号を告げられます。配達者が暗証番号を入力するとオートロックが解錠して扉が開きます。ただし、この暗証番号は2時間毎に変わるため、この時に告げた暗証番号を最長2時間後には使えなくすることでセキュリティを保ちます。

6. 終わりに

 今回の勉強会で紹介されたサービスを導入すると月々のランニングコストが必要です。さらに既存マンションでは、後付けするサービス用の設備の導入費用が管理組合の負担となるため、総会決議のコンセンサスを得なければなりません。
 また、ホームページや掲示板等はコンテンツの更新やその前段の情報収集など、管理組合自身が運営するには負担が大きいため、維持管理を委託するランニングコストも見込んだほうがよいでしょう。
 このような事情から既存マンションでは、ITサービスの普及が進まず、新築マンションとの格差が拡大しているそうです。しかし、築10年の既存マンションに不満なく住んでいる私の感覚では、新築マンションのほうが過剰な物を抱えているように思えます。
 コミュニティが活発であれば口コミで大量の情報が早く伝わります。私のマンションに来ている生協は、配達先とのコミュニケーションが良好らしく、オートロックインターホンで在宅の住戸を呼んで開けてもらい、不在の住戸玄関前へ配達しているようです。ITサービスでなく、工夫で不便に対処しています。工夫慣れしている既存マンションには、最新サービスの提供より工夫を支援するサービスのほうが受け入れられるのではないかと思いました。


【Q&A】

Q1: スマート掲示版の導入費用は?
A1: 42インチのディスプレイで60〜70万円。加えて取付け工事、電源・通信線の配線工事の初期費用が必要。ランニングコストは、利用料が毎月1万数1千円。コンテンツの更新費用が別途必要。

Q2: スマート鍵の導入費用は?
A2: インターホンを含むテンキーシステムが25万円。取付け費用と電源・オートロックコントローラまでの配線の工事費が必要。ランニングコストはコールセンタの運営費用として1戸あたり3百〜4百円。

Q3: スマート掲示板、KIOSK端末の導入実績は?
A3: スマート掲示板は10棟に提供している。KIOSK端末は来年1月に最初のユーザが利用開始する予定。

Q4: マンション専用ホームページの利用状況は?
A4: 情報量の多いマンションからのニーズがある。共用施設が多いマンションでは、施設予約機能が人気。

Q5: 電力のスマートメータで取得した消費電力の波形から単独居高齢者の異変を検知できると思うが、そのようなサービスは考えていないか?
A5: 電力の見える化サービスの応用として考えてはいる。しかし、どのような波形を異常と判断するのかが難しい。孤独死対策としては、動きを長時間検出しないとアラームを出す「動体監視」サービスを既に提供している。

(記録担当:大滝純志)

小関氏 講演の模様
 
質疑応答の模様