mckhug.com
2011.01.22 「“街”として活きるためのマンション(団地)建物改修提案募集」選考結果報告会

 1月22日(土)団地の明日を考えよう!「平成22年度国土交通省マンション等安心居住推進制度」事業の一環として、千葉市美浜区にある「稲毛高浜北団地」管理組合(築32年、30棟、総戸数880戸)が昨年9月に募集した階段室解消のためのバリアフリー改修に関する「“街”として活きるためのマンション(団地)建物改修提案募集」選考結果報告会が行われました。

 38件の応募の中から3作品が入選しました。
 説明会・表彰式会場の場所:千葉市美浜区 高洲コミュニティセンター3階ホール


当日のスケジュールは 13:30 ― 開会、主催者あいさつ
           13:40 ― 千葉大学工学部 森永准教授 講演
           14:10 ― マンションコミュニティ研究会 横倉啓子
           14:30 ― 表彰式、受賞者紹介
           14:50 ― 休憩
           15:00 ― 設計概要等プレゼンテーション(1提案:15分)               15:45 ― 質疑応答
           16:00 ― 閉会


 今回の設計コンペの選考委員のメンバーの廣田代表が日本マンション管理士会連合会主催の『マンション管理士合同研修会』の講演のため名古屋に行っていたため出席することができず、
代表に代わって横倉が務めました。













「稲毛高浜北団地」管理組合の理事長はコミ研正会員の片山次朗さんです。
















◎下記は廣田代表の寄稿文です。
 団地のよいところにフォーカスして世代がつながるコミュニティを育てる
 マンションコミュニティ研究会代表 廣田信子

●築30年・エレベーターなしの団地は実は高齢者にやさしい?
 稲毛高浜北団地のように、築30年を超える階段室型の団地は、大都市圏の郊外を中心に多数存在します。ここでは、居住者の高齢化とともに、エレベーターがないという根本問題をどうしていくかという課題を避けて通れません。
 しかし、これらの団地を別の側面からみると、高齢者にとってよい点もたくさんあります。
 もともとエレベーターがなくとも生活できる構造は、大地震でエレベーターが止まってしまうと陸の孤島と化してしまう超高層マンションに比べ、いざというときに外に助けを求められる高齢者にとっても安心な住まいです。バルコニー側から生活の気配を伺うことができる構造は、ひとり暮らしの高齢者の見守りにも役立ちます。

 また使用する階段ごとに自然に連帯感が生まれやすく、コミュニティの最小単位としてのセーフティネットの機能を持っています。1棟もほどよい戸数で、1棟が数百戸というマンションに比べれば、格段にコミュニティが育ちやすい環境にあります。さらに敷地が広く、敷地内の公園、広場、遊歩道等は、人と人とが触れ合う場として自然に機能しています。
 そして、築30年超の団地には、今のようには「管理」に関する情報も支援もない時代、周辺に便利な施設も少ない時代から、住民の手で団地を育ててきたという歴史があります。入居当時は、小さな子供たちも多く、子供たちのためにと親たちががんばったお祭り、もちつき大会等が今に引き継がれているものも多いでしょう。また、いっしょに活動した仲間とのつながりは今にも生きているでしょう。だからこそ、この団地で高齢になっても住み続けたいと思う人への対応が課題になる訳です。

●高齢者にも子育て世代にも安心なコミュニティを
 いざというときに安心な住環境は、子育て世帯にとっても魅力があるはずです。団地内に昼中高齢者が多いことは共働き世帯にも安心です。団地の高齢化ばかりがクローズアップ゚されますが、実は、住み替えによって、若い世代も増えているといいます。コミュニティがしっかりしている団地だと、そこで育った子どもが所帯を持ってまた団地に戻って来るというケースも少なくないようです。便利さや新しさばかりが価値ではありません。地面に近いところで周りの人と触れ合いながら暮らせるという環境の魅力は普遍のように思います。
 今回の事業に当たって、管理組合が居住者の年齢構成を調査されたことはたいへん意義があると思います。やはり、思いのほか若い世代もいることが確認されました。
 建物の構造を変えることは限界がありますし、中途半端な改修でかえって魅力をなくしてしまうようなこともあります。階段で5階まで上がるのも元気な世代にとってはよい運動です。高齢者も誰もが車椅子になる訳ではありません。団地内の上階から下階への住み替えをしやすくし、近隣のちょっとしたサポートのしくみがあれば、団地は今の姿を生かしながら魅力を持ち続けることも可能なはずです。
 そのためには、現在だけでなく未来の居住者像も意識しながら、将来の団地の姿をみんなで描き、できる範囲での改修を積極的に行っていくと同時に、いざというときには支え合えるコミュニティを育んでいくことが必要です。
 高齢者への配慮と同時に、子育て世代への配慮もし、若い世代に自分たちの価値観ややり方を押し付けないでお互いを尊重できるような世代間交流が進めば、両者にとって安心で居住価値の高い団地として生き続けられる、そんな未来が見えます。
 稲毛高浜北団地にとって、今回の試みが、その第一歩になると期待しています。

(横倉 啓子)